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グレーバランスに優れる顔料プリンターと良質な用紙を手に入れる。「第2の撮影」と言われる「プリント」が俄然楽しくなる。

レタッチ経験無しの編集長が挑戦。「レタッチってなあに?から始まるレタッチ講座」
その昔、Nikonの一眼レフやCONTAX RTSに大口径単焦点レンズの組み合わせで写真を楽しんで以来、とんとご無沙汰だという編集長。そもそもデジタルカメラでの撮影も殆ど行った経験が無く、レタッチも当然の如く未経験。実際にレタッチ、プリントに挑戦。考えてみれば、フイルム時代に写真に慣れ親しみ、その後ご無沙汰となると、撮影からRAW現像、プリントまで一貫して自分でコントロールするなんてことは新鮮かもしれませんね。・・・というわけで、実際に挑戦開始。渡した写真のRAW現像とレタッチを右も左も分からなくとも行っておくことを宿題に、レタッチ講座のはじまりはじまり。
お題写真のRAWストレート現像後
これまたアーティスティックな一枚。日陰での撮影なので少し寒々しいのですが元気いっぱいで楽しい写真。しかし最近ではあまり見ないクセだらけの背景のボケ味。

編集長レタッチ後
何をどうしたのかはわかりませんが、画像を見る限りストレート現像との違いは、画像全体が若干暗くなっているだけ?・・・だとすると。


編集員:「もう少しリッチな感じというか、温かい感じにしたかったのですか?」
編集長:「ご名答。」

 

恐らくですが、写真全体を一括でコントロールすると良くなったり悪くなったり、そんな風にレタッチというものを捉えられているのだと思います。

もう一例。何だか色に深みがない!

(1) まずレタッチの方針を立てましょう
箇条書きでポイントを書いてしまえばわかりやすいのですが、このページをご覧の皆様の中で「レタッチの理屈」みたいなものをお知りになりたい方のために、当日の会話をそのまま起こします。

編集員「まず写真全体を見て、レタッチをどうすべきか考えます」
編集長「方針?・・・いい感じにしてよ」
編集員「どうしたらいい感じになるか考えてみましょう。まずわかりやすいのは色味ですよね」
編集長「少し寒いから、もう少し温かみのある感じで」
編集員「温かいというのはどんな色調ですか?」
編集長「茶色とか、赤とか」
編集員「それじゃ、そんな色になるようにレタッチしましょう。あと、少しメリハリがないので、メリハリをつけます。あとピント甘くないですか?」
編集長「何処にもちゃんとはピントが合ってないね」
編集員「シャープというツールがphotoshopにはありますので、一番ピントの芯が見える葉っぱにシャープをかけます」
編集長「そんなことしていいの?ピンぼけ写真はピンぼけ写真じゃないの?」
編集員「これぐらいピントの芯が見えるならシャープで少しだけごまかせます。それに見る人を悩ませてしまうぐらいなら臆せずやりましょう」
編集員「レタッチ作業の順番は、プリントサイズへのリサイズ、色味の調整、シャープツールの使用となります」
編集長「順番決まってるの?」
編集員「photoshopの説明書に定められているわけじゃないのですが、同じ作業を繰り返さないということが大事なのです。たとえばリサイズを最後にやってしまうと、縮小した際に少し画像のコントラストが浅くなったり、ボヤけたりするわけです。それを再度レタッチするとどんどん画像は劣化するのです」
編集長「デジタルなのになぜ劣化するの?」
編集員「たとえばコントラスト調整を行ったとします。コントラストをつけるということは、要するにメリハリをつけるということですね。つまり、本来ある階調を一部切り捨ててメリハリをつけるわけです。当然捨てられた階調のデータは無くなるわけで、その状態から再度コントラスト調整をすると、元画像から目減りしたデータを操作することになります。これがつまり劣化です」
編集長「なるほどねえ」
編集員「なので、最初によく画像を眺めて、何をすべきかを考えます。そしてレタッチの順番を組み立てるのです。この写真の場合、まず色調を暖色に振ります。その調整を行うときについでにコントラストもつけます。最後にシャープツールでピントの甘さをリカバリします」
編集長「そんなの使い慣れてもないのにわからないよ」
編集員「一気に変わると考えるからわからないのです。青いってことはわかりますし、ピントが甘いというのはわかるでしょう? まずはそこに着目です。そしてそれらを一つずつ解決する方法を考えて実行するのです。ここが大事です。一つずつ物事をバラして考えるというのがレタッチの基本です。そして作業はできるだけ短絡化するのです。短絡化は使い慣れてくるとある時を境に一気にわかるようになりますよ」

 

というわけで、

  1. 全体を暖色傾向に。その際に可能であればコントラスト調整も行う。
  2. 一番ピントの芯がある葉っぱにシャープをかける

という2段工程のレタッチを行います。

(2) 色調を暖色傾向に振ります。まず赤を載せましょう。
「イメージ」→「色調補正」→「トーンカーブ」を開いて、チャンネルの"レッド"を選択し、図のように左下から右上に走るラインの真ん中あたりをクリックしてドラッグします。これで一番明るい領域(ハイライト)から一番くらい領域(シャドー)の丁度中間あたりに最も赤色が載り、かつ、ハイライトにもシャドーにも若干赤色が載ります。ちなみに"グリーン"を選択して逆のカーブを描けば(グリーンを減衰する=つまりレッドに傾く)赤っぽくなりますが、写真に緑色が被っているならともかく、基本は上の図のような感じに赤色を足してください。さて、赤色を足すだけでかなりよい感じになりましたが、黄色が入るともっとよくなりそうです。まだトーンカーブ画面の「OK」ボタンは押さずに次に行きます。

(3) 色調を暖色傾向に振ります。黄色に色調を転ばせます。
画像はRGBで表現されますので、Y(黄色)はトーンカーブのチャンネルの中にありません。ブルーを減衰することで黄色に色調が転びますので、ブルーのチャンネルを選び、先ほどとは逆のカーブを作ります。ちなみに、元画像は明らかにホワイトバランスが青色に転んでいるわけですから、その意味でもブルーを減衰するというのはよいと思います。・・・調整具合がカーブの動きとともに実際に元画像へ適用プレビューされますので、具合のほどを確認しながらカーブを操作します。黄色に転ぶことでさらによくなりました。これで暖色傾向に色調を変更するのは完了です。まだトーンカーブ画面の「OK」ボタンを押さずに、次は全体のコントラスト調整を行います。

(4) 全体にコントラストをつけてメリハリをつけます。
今度はチャンネルをRGB(つまり全体)に切り替えて、図のようなカーブを作ります。するとかなりメリハリがでました。これで「OK」ボタンを押して、色調とコントラストの調整は完了です。ちなみにトーンカーブ画面の山なりが描かれている部分に注目してみてください。何だか山に白い線が入っています。これはこの領域の階調が抜けてしまっていることを表します。これをトーンジャンプと呼びますが、基本的に望ましくないことです。ただし、絶対に望ましくないかといえばそうではなく、写真として求める仕上がりに到達し、それを阻害しなければ何ら問題ありません。これが青空のようなのっぺりとした空間が広く写し込まれた写真であれば、空が段々になって見えてしまい問題なのですが、今回のような写真であれば問題ありません。トーンジャンプを起こさないための処置もありますが、それはまたの機会に。

(5) 最後にシャープツールで、シャープにしたいところ(葉っぱ)をなぞって終わり
シャープツールでは必要な箇所に必要な量(20-30%程度が扱いやすい)シャープをかけることができます。また、一度にかける円の大きさも指定できます。完全にピントが合ったように見せるのは難しいのですが、何もしないよりは見栄えがすると思います。

(6) 完成!
以上でレタッチは終了です。好みに応じてもう少しハイキー気味(露出オーバー)にしてもよいかもしれません。

講座修了後・・・「レタッチはどこまでやっていいの!?」
レタッチソフトの扱いになれてくると、たとえば風景写真で電柱や電線を邪魔だからと消したり、「海と一組のカップル」なんて光景に突如他の人が現れて目論見が外れたので、写り込んだ人を消してしまう・・・なんてことができたりします。また、さほどノスタルジーでもない光景を捉え、彩度を落として色調を暖色傾向に転ばせて「ノスタルジー」を演出する、なんてこともできてしまいます。これはよいことなのか。・・・善し悪しよりもまず出来てしまうことなので、レタッチのスキルアップのためであれば、映画やテレビ、雑誌、絵画、その他様々な世界でのイメージをモチーフに、がんがんやってみることもよいのではないでしょうか。ただ、何らかの形で他人に写真を見せたり公開したりする目的で写真表現を行う場合に、何処か線引きを・・・と考えてしまいますが、結局は当事者の方の「選択」なのだと思います。人に何かが伝わるというのは、本質的には「手段」や「工程」ではなく「目的」そのものだと思います。一言申しあげるとすると「何事もほどほどに」ということでしょうか。ピアノの調律師の仕事でたとえると、素晴らしい仕事をしたとしても音階を変えてしまう訳にはいきません。このたとえは極端な話ですが、"音階を変えてしまうと" CGの世界と何だか区別がつかなくなってしまい、やってるご本人が飽きちゃうかもしれませんね。撮影領域で詰められる作業を、レタッチで補っても何だか良心がチクチク・・・なんてのはご本人の中だけでのお話。他人にはわかりませんが(見る人が見ればわかりますが)、どうせならドーンと構えたいもの。レタッチ云々というよりも、むしろチクチクしちゃってるのが案外他人に伝わったりするのかもしれませんね。

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