ミラーレス一眼の登場によりコンパクトなレンズ交換式カメラは色々と登場していますが、これほど小さいカメラは他にありません。レンズ交換式のデジタルカメラとして「PENTAX Q」は世界最小。往年のカメラファンならばペンタックスがかつて出していた「Auto 110」を思い浮かべ、ニヤリとされるのではないでしょうか。サイズの小さい110フイルムを使うことで小さなボディを実現し、それでいてちゃんとレンズ交換式の一眼レフカメラであったAuto 110。PENTAX Qはまさにその現代版と言えます。さて、どんな仕上がりなのでしょうか。
これだけ小さなボディで、センサーサイズはコンパクトデジタルカメラと同程度。その描写もある程度想像はつくものですが、「意外に」と言ったら失礼でしょうか、写してみるとこれがなかなかの優れもの。ローパスレスであることで、シャープな描写が得られるのでしょう。「所詮コンデジ」などと思わず、その画をじっくりご覧ください。
細かな草木もしっかり描写。金属の質感もなかなかです。
ぐっと近づいて一枚。コンパクトなボディも相まって、食事撮影には活躍しそうです。
なにより天晴なのはこのサイズ。手のひらにすっかり収まってしまう大きさで、従来のカメラをそのままミニチュアにしたような印象です。手にしてみるとしっかりとした重さがあり、マグネシウム合金のボディは質感も上質。小さくてもチープさはまったくなく、むしろ精密な機械のがみっしり詰まっているという感覚があります。小さくて可愛らしく見えるその第一印象と手にした時の存在感のギャップが面白く、モノ好きの方々には心踊らされる出来といえるでしょう。女性のハンドバックに入っていても可愛いし、大人の男性の持ち物としても洒落ている。小さくても、堂々たる風格のカメラなのです。
コンパクトなボディということもあってインターフェイスはシンプルにまとまっています。ボディの質感に比べるとトイレンズはまさに玩具のように軽く、レンズをつければ「さあ、適当に撮るぞ」なんていう逆説的な気分になって、背筋もゆるみます。
5本の交換レンズが用意されているPENTAX Qですが、そのうち3本はいわゆるトイレンズ。プラスチックのレンズを使っているような玩具のカメラが生み出す「ゆるい世界」や「思いがけない表現」を楽しむことができます。手軽に集められるという価格もさることながら、トイカメラの写りを最新のデジタルカメラで楽しめるという点が魅力的ではないでしょうか。
ピント合わせの難しいトイレンズ。とはいえピンぼけやゆるい描写がそもそも楽しいんですよね。
魚眼ならではのダイナミックな写り。目一杯寄ったり傾けたりしすると面白いレンズですね。
光の飽和がいい雰囲気です。光のあふれる場面へレンズを向けると楽しい画がたくさん撮れそうです。
エフェクトも色々。クロスプロセスなどトイカメラ好きの王道はもちろん押さえられています。
何より小さなボディサイズが特徴のPENTAX Q。しかし一度手にして使ってみれば、その中身は決してサイズだけを追求したものではなく、きちんと撮れる本気のカメラであることがわかります。標準単焦点レンズとの組み合わせなら、安心して使えるミニマムなカメラ。一方でトイレンズという選択肢があるのもレンズ交換式だからこその魅力です。真面目に遊びを楽しんで欲しい、そんなメーカーの想いが感じられるようです。
玩具のように見えるサイズながらハイクラスのデジタル一眼レフのような質感のボディ、そしてきちんと写る高画質は、遊び心のある方にぴったりの逸品。正統派のカメラらしい佇まいのブラックボディも、キュートでポップなホワイトボディも、手にする方のお好み次第です。老若男女を問わない個性的な一台、どうぞ手にとってお確かめください。