オリンパスのPENはクラシカルな金属カメラの質感・手触りを特徴としながら、往年のカメラファンや女性などに高い支持を受けてきたシリーズ。同シリーズも3世代目となり、細かな機能や使い勝手をじっくりと成長させてきた感があります。今回レビューをお届けするのはPENのなかでも「Lite」と銘打った「E-PL3」。「E-P3」に比べると少し機能がシンプルで、少し軽くてコンパクト。外観は金属カメラ的なデザインにはこだわらずスマートにブラッシュアップされ、すっきりとしたフォルムになりました。その使い心地、じっくり試してみましょう。

銀塩カメラの時代、写真のフォーマット（アスペクト比）はフイルムとカメラで決まっていたものです。どこに何を配置して、どんなふうに撮るか。比率が異なれば当然画づくりも変わるもので、自分にしっくりくるフォーマットを選んだり、撮りたいものにあわせてカメラを変えたり・・・フォーマットの選択もひとつの楽しみであったと思います。そんなフォーマットをいつでも変えられるというのは、デジタルカメラならではの恩恵。液晶モニタに合わせたものだけでなく多彩なフォーマットが用意されているのは、写真好きの気持ちをメーカーが良く理解している証といえるでしょう。後から切りとるのと、撮るときにその比率であることは、やはり違うのです。

フイルム時代から定番である3:2のアスペクト比。画面を整理しやすく、使いやすいフォーマットといえるでしょう。

（左）中判カメラでよく使われてきた6:6という真四角のフォーマット。ポラロイド写真を思い浮かべる方も多いかもしれません。
（右）4:3だけでなく3:4が用意されているのはメーカーの遊び心でしょうか。ハーフサイズのフイルムカメラであったかつてのPENは、ふつうに構えると縦長の写真が撮れるカメラでした。3:2を半分にしたフォーマットです。

16:9はシネマの雰囲気。動画を撮りたくなる比率ですが、写真としてもなかなか面白いフォーマットです。

圧倒的に速くなったフォーカス速度や洗練されたメニューを見れば、3世代目になったことの進化を強く感じることができるでしょう。そして本機種ならではの「可動式ワイド液晶」は、撮りたい画を撮るために便利なギミック。手を高く伸ばして人ごみの上から狙ったり、子供にあわせた目線で撮るときなど、なかなかに重宝する機能です。縦にしか動かないところは、メーカーの考え方が現れているポイントではないでしょうか。実際斜めや横に液晶が動いたとしても、むしろ被写体を狙いにくくなってしまうもの。写真を撮るために必要なもの・写真を撮るために大事なことに絞って、進化を続けている。触ってみれば進化を実感できる。そんな実直なカメラなのです。

地面スレスレから狙うのもお手の物。動物の目線で眺めてみれば、きっと新鮮な世界が写ることでしょう。

高速連写は秒間5.5コマ。動きのある被写体には、積極的に使っていきたい機能です。

ISO1600でも階調はなめらか。標準レンズのボケ味も素直です。

今や様々なメーカーのデジカメに内蔵されつつあるフィルター機能ですが、最初に搭載したのはPENシリーズ。たくさんの写真家によって追求されてきた写真表現を、手軽に楽しむことができます。人気のある6つのアートフィルターを搭載し、5種類のアートエフェクトを組み合わせることがで、「ちょっと格好いい写真」ができあがる。それぞれが「よい塩梅」に仕上がるのは、さすがオリジナルという気がします。

トイカメラで写したような周辺光量の低下と独特の色合いが面白い「トイフォト」。綺麗に撮ろうなんて思わずに、ゆるい気持ちでスナップしたくなります。

「フレーム効果」は他のアートフィルターとの組み合わせがしやすいエフェクト。フレームがつくだけでなんとなく「作品」らしくなりませんか？

夜景に使いたくなる「スターライト効果」。光があふれている場面で使ってみると、思わぬ表現が生まれそうです。

「ポップアート」はむしろポップでない被写体に向けてみると面白いかもしれません。

きちんと写ることが大前提のデジタルカメラですが、やわらかく写したいときには「ファンタジックフォーカス」があります。

PEN Liteに搭載されている様々な機能を見ていると、多くの人々が培ってきた「写真の楽しみ」をしっかりと受け継いでいるカメラだと感じます。写真を撮りたい人が望むことをきちんとトレースして、やがて生まれる「こんなふうに撮りたい」にもちゃんと応えていく。よくできたカメラだから、初心者からベテランまで使う人を選ばずに楽めるはずです。

同シリーズのフラッグシップモデルである「E-P3」に比べても、実は見劣りしない性能の「E-PL3」。アートフィルターの数や液晶パネルの違いなどはありますが、コンパクトで軽量なボディとそのスタイリッシュなデザインは、敢えてこちらを選択するだけの魅力があります。軽快な撮影にぴったりの一台。あとはお好みの色を決めるだけではないでしょうか。