いまの時代にぴったりな!?デジタルガジェット的カメラシステム、リコーGXR。その面目躍如といえる「Mマウント対応ユニット・GXR MOUNT A12」が発表されました。あの膨大な数のライカMマウントレンズが殆ど取り付できて使えるというマウントユニットです。シャッターとセンサーを搭載し、あとはMマウントがあるのみ。自社レンズがリリースされるわけでもなく、他社のマウントを採用・提供するという前代未聞な話です。このユニットのリリースが発表されたとき、正直なところ「リコーさんも一連のミラーレス機&マウントアダプターで実現できていることをいまさら!?」と感じました。しかしフタを開けてみれば、なんとローパスレスです。このページをご覧の方々にローパスレスであることのメリットを並べるのは釈迦に説法だと思いますが、やはりローパスフィルターを搭載しているカメラに比べて格段にシャープであり、レンズの性格がスポイルされず、比較的特性が出やすいと言えます。ライカMマウントの歴史は長く、数え切れないほどのレンズが存在します。

オールドレンズ特有の描写に魅せられてライカを愛用する方にも、ローパスレスであることは嬉しいポイントではないでしょうか。これまでMマウントのデジタルカメラをお持ちでなかった方には、なによりこのリーズナブルさ、非常に魅力的でしょう。そして本家と同様ローパスレスであり、コンパクトで、とにかくMマウント採用のデジタルカメラとしては第一選択として大変おすすめです。また、既にMマウントのデジタルカメラをお持ちの方にとってもリーズナブル&コンパクトというのは響くと思うのですが、単にマウントアダプターを介する使い方とはひと味違う、慣れ親しんだローパスレスであることはもちろん、「ライブビュー」でM型レンズが使えるという面白さも。俄然気になりませんか!? 今回、試作機でのレビューとなるため、ボディの使い勝手については割愛させていただきますが、作例をご覧になって「う〜ん」と楽しい悩みに浸ってください。それでは作例、行ってみましょう。

(文・作例撮影/ヨドバシ.com編集部・K)

ライカMマウントのレンズは、一眼レフの世界では考えられないほど、大口径レンズがコンパクトであることが一つの特長でしょう。しかも単焦点レンズばかりなので、大半がf1.4〜f2.8程度の「大口径」。積極的に絞りを開けて楽しむのが作法の一つ!? ・・・ローパスフィルター搭載機と比べれば、絞り開放でもボケもスコンと抜けず、ある程度厚みが感じられます。NOKTON 50mm F1.1の特長である後ろボケの二線っぽさもよく再現されています。しかし、大口径レンズはM型のボディで使う場合、距離計とのマッチングがある程度あるのですが、ライブビューならそんなことおかまいなしです。普段、レンジファインダーを覗きなれていると、ピントリングを操作し、前後にピントが移動する様をモニターでみるのは新鮮です。これだけでも面白い!
しかしクセだらけのレンズで、背景までの距離に気を遣わないと思いも寄らない結果に。このレンズをお買い求めの方は、これがよくてお買い上げなのだと思いますが。滑らかなボケ味に慣れていると、この油絵みたいな描写は面白いですね。しかし、クセが忠実に再現されています。

F1.1というハイスピードレンズは、一眼レフの世界の現行ラインナップに存在しません。これだけでもMマウントには魅力が。ひとたびMマウントカメラに手を出すと、ある種無限といってよいほどのレンズがあるだけに非常に「危険」です。これも同じマウントがずっと続いてきたことによるのですが、考えようによってはずっと楽しみが持続するシステムでもあります。・・・そんな話はさておき、開放から球面収差も殆ど見られない「クッキリハッキリ」の世界から、絞り一つで描写がガラっと変わる、そんなシステムの世界はいかがでしょうか。何もオールドだけではなく、現行レンズだけでも山のようにレンズがラインナップされています。

同じNOKTON 50mm F1.1を、今度は開放からF8程度まで絞り込んでの撮影です。ローパスレスの面目躍如ですね。非常にシャープで立体感もあります。最近のレンズではここまで絞り値で描写が変わることはあまりありませんが、Mマウントの世界はこんなレンズが現行で買えるのです。しかし、同じ価格帯でここまでシャープに写るカメラはある種無いかもしれません。つまり、レンズの味を愉しむ云々を抜きにして、正統派!?に撮影に取り組むレンズ交換式カメラのシステムとしても、これほどコスパフォーマンスの高いカメラは無いかもしれませんね。見渡す限り、競合はSIGMA SD15あたりぐらいでしょうか。カメラとしてのシステムはまるで違いますし、ここまでコンパクトなのはGXR&GXR MOUNT A12のみです。


APS-Cサイズセンサーだと広角に弱いのでは?とご心配される方も居るのではないかと思いますが、ご安心ください。Voigtlanderには12mm(135換算18mm程度)から、非常に優秀でリーズナブルなレンズがラインナップされます。その他、もちろん本家・ライカレンズ、Carl Zeissなど、迷うほどにあります。ちなみに、単焦点レンズ(必然的に性能を出しやすい)が、これほどまでにラインナップされるのはMマウントの世界ぐらいです。

すべてDNGで撮影、Capture One Pro6で現像しています。JPG撮って出しの画は色再現がわりと渋めで、現像処理時にその傾向に近づけて出力しています(DNGはわりと彩度が高め)。ハイライトが若干飛びやすいかな?といった印象はありますが、試作機での撮影のため、製品版と比較してみないことにはわかりません。ISO200スタートで、減感モード有り、シャッター最高速は1/4000ですから、日中でもわりと絞り開放近くでも撮影できます。

ハイライトが飛びやすいかな!?といった印象を記しましたが、トーンの連なり自体は良好です。モニター上で飛んでる部分を、現像ソフトにて露出値をアンダー側に振ってもデータ上トーンが無いことが大半です。これは裏返せば結構一杯一杯までチューニングされている感じで、そういえば中間トーンが割と厚い気がします。撮影時にハイライトのポイントを見極めて撮影すれば短所とはならないでしょう。しかしクリアな感じがよい印象です。

なかなかの立体感です。一つ前の作例は開放で、本作例はF4程度です。絞り一つでこれだけ描写が変われば、やはり楽しいですね。それにしてもVoigtlanderのレンズはリーズナブルで、よく写ります。35mm F1.4といえば一眼レフの世界では価格もサイズも立派になりますが、コンパクトでリーズナブル。おすすめですよ。

オールド、クセ玉の代名詞、ライツ・ズミルックス35mmです。マウントして絞り開放でシャッターを切れば、寝起きのようなベールの掛かった描写が特長ですが、単にホワ〜ンとするだけでなく、非常に線が細く描写に芯があるのがよく再現されています。このあたり、ローパスレスであることがよく効いていると思われます。

当然電子接点などを持たないMマウントレンズに、レンズ名までEXIF情報に打ち込める機能がわざわざ搭載されていたり、周辺光量をコントロールできる機能もあったり、どう考えたって「Mマウントのユニットを作りたい!」という一点でリリースされた製品だと・・・。これはもう、Mマウントの世界に興味があって躊躇若しくは二の足を踏まれていた方や(様々な理由があると思いますが・・・)、ズッポリとハマりこんだ方々だけを向いた製品と言い切ってよいでしょう。しかし、単にレンズをマウントできるだけのユニットではヨシとせず、ローパスレスでリリースしてくるあたり、何処までも対象ユーザの方々を向いた製品です。

もし、このページをご覧の方で、Mマウントの世界を未だ経験されていないのであれば、日本の1メーカーが他社のマウントを採用してまでこのような製品を送り出す、そのリスペクトの意味と意義をご想像いただきたいのです。極めて客観的にいえば、無尽蔵な交換レンズ群、そして非常にコンパクトにまとまる、写真を撮るための、ある種これ以上の引き算ができない合理的なシステム。そして長い歴史の間で、色んな人々想いと一緒に手から手に渡って、古(いにしえ)のレンズが現存する事実が、確たる世界を物語ります。一度覗いてみませんか? 前々から興味をお持ちの方は、非常にコストパフォーマンスの高い有力な選択肢となりうるでしょうし、すでに世界を満喫されている方々には、レンジファインダーを離れて、ライブビューでピントを追いかけられる面白さを提案したいと思います。GXR MOUNT A12、ハッキリ申し上げて、キケンです。