様々なカメラやレンズのテストをしていると、慣れてしまって少々のことでは驚かなくなってしまうのですが、撮影時に液晶モニターを覗いた時点でその写りに感心したのが、この「Carl Zeiss Distagon T* 1.4/35」。その印象を簡潔にまとめると以下のとおりです。

レンズとしての基本性能が非常に高く、好みをさておいても手にして後悔することの無いレンズです。単焦点・開放1.4のレンズに目がとまる方は、やはり開放付近で撮影したい方が多いのではないでしょうか。ともかく開放からよく写ります。・・・まずは作例をご参考に、Carl Zeissの世界を少し覗いてみてください。

(写真・文/K)

ボケの滑らかさは本当に広角レンズかと思ってしまいます。CONTAX一眼レフ用のレンズも同様の傾向ですが、さらに滑らかになった印象です。描写はいわゆる「線が太い」というわけではありませんが、割と力強い印象です。急須の質感がよく再現され、右上からのサイド光によるグラデーションも非常に滑らかです。
なんと申しましょうか、、ご覧のとおりです。最短付近で撮影。被写体そのものを抜きにしても、描写傾向は総じてウェットな印象です。
かなりキツめのトップライトにシルバーのボディと、条件的には非常に厳しいのですが、よくまとまっています。後ろボケの滑らかさがよくわかります。

かなり低照度な環境でシャッターを切っています。開放での性能が高くなければ多少絞り込む必要がでてきますが、本レンズは開放から十二分のキレ。スリッパの質感もよく再現されています。開放における周辺光量はそこそこ。むしろこれぐらい落ちた方が雰囲気が出て好ましいと感じます。

中望遠かと見紛う立派なサイズに、純正レンズ最上位と肩を並べる価格。しかも単焦点レンズ。興味をお持ちの方は、その写りに対して一番注目されていたのではないでしょうか。個人的な印象では、コシナ社がリリースする一連のCarl Zeissシリーズの中でも図抜けた写りであるように感じます。また、f1.4クラスとなるとピントも非常にシビアであり、この開放値のレンズに注目される皆さんは、積極的に開放から撮影されることでしょう。必然的にマニュアルフォーカスの機会も増えると思われますが、そもそもマニュアルフォーカスである本レンズは、フォーカスリングのタッチも最上のフィールと言えるでしょう。操作する度に、しみじみ使う喜びに浸れること請け合いです。マニュアルフォーカスで非球面レンズすらも採用されていない非常にプリミティブな構成でありながら、この価格です。期待されている方を裏切らないレンズだと言えるでしょう。