レンズ前1cmまで寄れたり、手ぶれ補正機構が搭載されていたり、いまどきのコンパクトデジタルカメラのような便利な機能は何一つ搭載されていないと言って過言でないカメラ。しかし「便利」とは、文字通り「目的」に対する「利」を指します。このカメラは「目的」と「利」はどのように設定されているのか、まずはここを明らかにしたいと思います。
まず、一般的なコンパクトデジタルカメラより少し大きなサイズとなりますが、十分にコンパクトなカメラボディに、APS-C相当の大きなセンサーを搭載している点が、明らかに"コンデジ"と一線を画します。さらに、搭載するセンサーはFOVEONという非常にユニークなものであり、このセンサーの特性上、ローパスフィルターが不要であり、非常にシャープで素直な画が得やすく、かつ、色を垂直方向に積み重ねた感光層で受け止めるというフイルムに似た構造を持ち、このセンサーはその他の一般的なセンサーの画とはひと味違います。何が違うのかはサンプルを見ていただいて感じていただくとして、ともかく、高画質な画がえられる映像エンジン(センサー周り全てを含めて)を搭載しています。
そして、一眼レフとは違いレンズを固定化しています。これによってセンサーにレンズの設計を最適化できる強みがあるのは想像に難くありません。つまり、汎用性のある交換レンズよりも性能を追いやすいと言えます。さらに、搭載されるレンズは35mmフォーマットにおける41mm相当の画角を持つ単焦点。この点でもズームレンズに比べれば性能を出しやすいと言えます。また、いわゆる「標準レンズ」とされるものよりも若干広めの画角を持つため、使いでに富むのではないでしょうか。
つまるところ、DP2xは「間に合わせたくない」人向けのカメラと言えます。カメラを持ち歩き写真を撮る以上、画質を犠牲にしたくはない。ズームレンズで利便性は上がるだろうけれど、少々は自分が動いて撮り、画質にも有利に働き、逆にプロセス楽しめるなら画角なんて固定化して構わない・・・なんて人向けのカメラです。機材に間に合わせてもらうのではなく、自分が間に合わせる。そして何より画質を追いたい人に、ぜひ使っていただきたいカメラだと言えます(撮影:A.INDEN / 文:K)
出で立ちは似ても、コンパクトデジタルカメラにここまでの解像力は望めないでしょう。ページ最上部、海のカットも水しぶきの粒立ちまで解像してしまうのには感心してしまいます。
1段絞っての撮影。花びらのシャープさに感心。シグマのデジタルカメラ全般に共通することですが、色調は非常に重厚的。意識的にアンダー目に撮ると青空などは"墨"が載る感じですが、これを標準添付の現像ソフトで持ち上げると、青空はクリアで、かつ、色が抜けない(重みがある)、そんな再現が可能になります。
近接開放での撮影。コンパクトデジタルカメラのように極端には寄れませんが、実用上困らない程度には寄ることができます。またこのボケ量は大型センサーを搭載するカメラならでは。陶器のスイッチパネルの柔らかいラインがよく再現されています。
雨に濡れる様をリアルに再現。さすがに単焦点だけあって歪曲収差はよく抑え込まれている印象です。
「持ち歩ける本気カメラ」なんて表現も変なのですが、画質を追求すれば、フイルムでいえばフイルムサイズを大きくするのが一番手っ取り早いと言えます。しかし、たとえは極端なのですが大判や中判のカメラを毎日の通勤・通学で持ち歩くのは至難の業です。これはたとえ135ライクなデジタル一眼レフ・フラッグシップでも、同じことが言えます。その点シグマDP2xは、非常にコンパクトなボディにAPS-C相当の大きなセンサーを搭載し、画質を犠牲にすることなくダウンサイジング。カバンはもちろんポケットにさえ入ってしまいます。さっと撮りだし、大きなセンサー所以の高画質画像で作品作りに興じることができます。
そして今回のマイナーチェンジで、オートフォーカスの速度が随分速くなった印象です。オートフォーカス専用の機構を持たないこの種のカメラは(センサー面でコントラスト検知)、どうしても機敏にピントを追えない不満がありましたが、確実によくなりました。うれしい改善です。「FOVEONセンサーの凄さは、いろんな作例で知ってるけれど・・・」とこれまで模様見だった方に、ぜひおすすめしたいのです。そして、繰り返しになりますが「間に合わせたくない」方にも、唯一無二のこのカメラをおすすめいたします。