www.yodobashi.com
マウントアダプターのススメ

「マウントアダプター」とは読んでそのままの意味なのですが、右の写真のように他のマウントのレンズ(写真はM型ライカ用)をとりつけるための "下駄" みたいなものです。これを取り付けることによって一つのカメラボディに様々なメーカーのレンズが取り付けることができるのです。・・・たとえばこんな使い方ができます。

魅力的なカメラボディが発売されたので欲しい。でも今あるレンズ資産に加えて新たなカメラのためのレンズを買いそろえるのが難しい。
純正のレンズラインナップでは得られない描写が欲しいとき。
凄く惚れ込んだレンズを、違うカメラでも使えたら・・・
上記のようなシーンになにかと重宝するのです。まさに交換レンズならぬ「交換ボディ」のためのツールでしょうか。今回はマウントアダプターの仕組みを中心に、ご利用の際の注意事項も踏まえてご紹介いたします。

「カメラのマウント面」から「撮像センサーまたはフイルム面」までの距離を「フランジバック長」と呼びます。カメラのシステムごとにフランジバック長は定められ、レンズはそれに基づいて設計されています。たとえばニコンのカメラなら46.5mm、キヤノンEOSのカメラなら44mmといった具合です。

 

さてマウントアダプターを用いて、ニコンとキヤノンの「ボディ」「レンズ」の組み合わせ可否は以下のとおりとなります。

 

○ キヤノンEOSボディに、ニコン用レンズを取り付ける
× ニコンボディに、キヤノンEOS用レンズを取り付ける

 

なぜキヤノンEOSボディにニコンのレンズは取り付けられるのに、その逆はダメなのか。それはフランジバック長の違いの影響なのです。キヤノンEOSのカメラにニコンのレンズを取り付ける場合、ニコンのカメラシステムは、キヤノンEOS用カメラシステムに比べてフランジバックが長いため、マウントアダプターを介して取り付けることができて、かつ、レンズの最短撮影可能距離から無限遠まで全域でピントを合わせられます。しかし、ニコンのカメラにキヤノンEOS用のレンズは物理的に取り付けることができても無限遠付近の距離ではピントを合わせられません。つまりニコンのボディに取り付けても、レンズ設計上の正規の位置より2.5mmほど前側にズレて取り付けられることになるため、ピントの合う範囲が近接側にシフトしてしまうため、本来ピントが合うべき無限遠方向が合わなくなってしまうのです。難しいことはさておき、マウントアダプターを使う際には以下のように覚えていただければよいと思われます。

 

→ 使いたいレンズのフランジバック長が、取り付けるボディのフランジバック長より長ければOK

 

つまり、フランジバックが長い分には、その分「下駄(マウントアダプター)」を履かせれば、レンズの設計通りのフランジバック長は保てるのです(つまり使うことができる、ということです)

 

上記の組み合わせ例でフランジバック長の短いものから順に並べると、「マイクロフォーサーズ」「フォーサーズ」「キヤノンEOS」「ニコン」となります。フランジバック長が短ければ短いほど取り付けられるレンズの種類は増えていきます。蛇足ですが、これまでマウントアダプターといえば、一部のマニアな方?のニッチな商品でしたが、フランジバックが極端に短いオリンパスペンE-P1などのミラーレスデジタル一眼レフの登場以来、すっかりメジャーな製品となりました。

※ご使用にあたって不具合が生じた場合、メーカー保証が受けられなくなります。
他社製レンズをマウントアダプター経由で取り付けることになりますから、メーカーの想定する使用方法を逸脱していることは明らかでして・・・従いましてご自身の責任の下にお楽しみください。

※純正レンズのような使い勝手は望めません。
基本的にマニュアル露出となります。ご自身でシャッター速度・絞り値を設定して撮影することになります。また、カメラの露出計が作動しないことがあります。

※マウントアダプターが存在しても、一部物理的に取り付けられないレンズがあります。
極端にレンズ後端がマウント面より入り込み、長かったりする場合、カメラボディ側に干渉して取り付けられない場合や、無理に取り付けると、最悪カメラを破損させてしまうようなことがあります。そんな悲しい事態を招かないためにもご自身の責任の下に、ぜひインターネットなどで事前の下調べをお願いいたします。

現代のレンズは光線状態にかかわらず、かなり「クッキリ・ハッキリ」写ります。もう少しレトロな雰囲気が欲しいときなどに、少し古いレンズを組み合わせると、昨今のレンズ描写ではなかなか得られない面白い描写をしたり。

オリンパスE-P1 + 純正17mmレンズで撮影。とても良く写ります。本当に小さいレンズなのですが素晴らしい写りです。

オリンパスE-P1 + 1970年代のライカ・オールドレンズで撮影。現代のレンズと違い、点光源は滲み、シャープさに欠け、コントラストも低い感じです。しかし緩い描写が欲しいときには面白い組み合わせです。E-P1などのオリンパスペンシリーズには「ファンタジックフォーカス」というエフェクト機能がありますが、画像処理で作る雰囲気と、レンズの光学的要素によるそもそもの描写はニュアンスが全く違います。画像処理と光学的に滲むのがどちらがよいかということではなく、光学的な滲みは光学的な理由で得られるのです。要するにたとえばこのニュアンスそのものが欲しいとき、マウントアダプターは強力な味方になってくれます。また純正のレンズラインナップから比べれば選択肢が膨大に増え、泥沼的な?楽しみが拡がっていきます。そう、マウントアダプターの一番の面白さは、色んなレンズをとっかえひっかえすることそのものだといってよいでしょう。楽しすぎてお財布が非常に危険な状態に陥る懸念がございます。しかも往々にして写真のデキそのものの善し悪しには全く関係なかったりします。十分にご用心ください。

オリンパスE-P1 + ニコン50mm F1.4レンズで撮影。マイクロフォーサーズ等のレンズキットに付属するレンズは開放値もそこそこの明るさで、開放での撮影ならそこそこに後ろボケも得られますが、もっと大きなボケが欲しいときなどは、もう少し焦点距離が長めのレンズにF1.4クラスの明るさのレンズが欲しくなります。しかし、現行の純正ラインナップにはそのようなレンズがありません。そんなときにも「マウントアダプター」は活躍します。

 

ボディの性能も大事なのですが、写真はレンズが決めるという格言?があるほどです。色々な組み合わせで絵筆が増えるような感覚。ぜひ色々とお試しになって楽しんでください。

Copyright(C)2009 Yodobashi Camera / yodobashi.com All rights reserved.