"画質最大化"の王道を行くユニットを検証。GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO

03 このユニットこそが命

APS-C相当のセンサーを積むA12と、1/1.7型センサーを積むこのユニットS10。そもそもセンサーサイズがまるで違うため画質は比べるまでもないのですが、なぜリコーがこのユニットをリリースしてきたのでしょうか。24-72mmのズームレンズとセンサーシフト式の手ぶれ補正機構を搭載しています。確かに単焦点レンズのA12だけでは機動性は落ちます。GXR+S10ユニットでも、本家コンパクトデジタルカメラと比較してもそこそこにコンパクト。しかし他にコンパクトデジタルカメラを既にお持ちなら、それで事足りてしまいます。当然コンパクトデジタルカメラの代替え需要や、これから購入するユーザを見据えてのリリースだと思いますが、むしろA12のように大きめのセンサーとデキのよい単焦点レンズを積んだユニットを複数リリースしたほうが分かりやすい気もします。

しかし、このユニットの存在がGXRというパッケージングの将来性を見せているような印象を受けます。カメラ操作部と電源、そして液晶モニタ等々の"母体"と、様々な次元と性格のユニットを一つのパッケージとして包み込む。これはどんなカメラにもない特色といえます。そう考えてみると、センサーサイズこそ小さいけれど、1cmまで寄れて、コンパクトで優秀なズームレンズ(仮にAPS-Cサイズなら何倍もの大きさになってしまう)を搭載したこのユニットも「あると便利だな・・・」と感じてくるのです。 まさに、GXRならではの"拡張性"を表しています。レンズとセンサーを一つのユニットとすることで、普通のカメラでは土俵の違う領域までの拡張は望めません。GXRなら、たとえるなら135フイルムカメラと中判カメラの領域にまたがって撮影システムを構築できる・・・といったようなことです。さて、それではS10の実力に迫ってみたいと思います。以下よりレポートです。

 

RICOH GXR + GR LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC 絞り優先 F2.5 ノーマルプログラム F5.7 ISO 200 24mm 相当 (写真クリックで原寸表示)

 

RICOH GXR + GR LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC 絞り優先 F2.5 ノーマルプログラム F4.6 ISO 100 24mm 相当 (写真クリックで原寸表示)

画面の隅々まで優秀さが光るズーム

さすがに24mm相当の超広角となると画面の四隅が流れ出しもするのではないかと思っていたが、隅々まで非常に緻密に描写され、いささか驚きを隠せません。コンパクトデジタルカメラといえばレンズ性能は「まあそこそこでしょう」といった先入観を見事に打ち破られました。非常に優秀なレンズです。

 

(上)
左下の芝生、右上に木々と高周波の被写体に対してもそつなく写し込むこの実力。

 

(下)
A12ユニットで被写体と対峙し、突如シーンは切り替わって空間を切り取りたくなった。そんなときにユニットを付け替える、なんて使い方がよいのでしょう。広角ならではの非常に伸びやかな描写。特筆すべきは直線が直線で再現されること。レンズそのものが優秀なのか、それとも映像エンジンでの補正なのかはわかりませんが、結果的にそのように写れば何ら問題なし。よい描写です。

RICOH GXR + GR LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC 絞り優先 F2.5 ノーマルプログラム F9.1 1/4秒 ISO 100 24mm 相当 (写真クリックで原寸表示)

 

RICOH GXR + GR LENS S10 24-72mm F2.5-4.4VC 絞り優先 F2.5 ノーマルプログラム F2.5 1/2秒 ISO 200 24mm 相当 (写真クリックで原寸表示)

手ぶれ補正機構の恩恵

S10はコンパクトデジタルカメラをルーツとするユニットであり、手ぶれ補正機構も搭載。技術というのは日進月歩で、この先どうなるかはにわかには断じがたいのですが、A12のようなAPS-C相当のセンサーを搭載していると、さすがにセンサーシフト式の手ぶれ補正機構の搭載は難しいのではないでしょうか。上下2カットともに手持ちではかなり厳しいシーンです。実現できたのはS10のおかげ。文字通り撮影領域が拡がります。

 

(上)
一杯まで絞り込んで撮影。シャッター速度は1/4秒。さすがに広角24mmといえど、手持ちでは止めるのは至難の業です。1/4なら水の流量にもよりますが、このような表現も可能に。A12だと三脚のお世話に。。。

 

(下)
暮れなずむ金沢・主計町。さすがにこの光量ではISO200までゲインアップしていますが、それでもシャッター速度は1/2秒。手ぶれ補正機構の威力をいかんなく発揮。

総括

二日間にわたりスナップして歩きましたが、このレンズ交換をユニットで行うということが、驚くほど快適でした。通常一眼レフなどは、正直かなり気を遣います。ちょっとほこりっぽい外出先なんかでは交換はためらってしまうものですが、このセンサー内蔵というユニットであれば、それこそ、本体、ユニット、別々にカメラバックに入れて持ち歩いてもいいくらいに感じてしまいます。当初とまどったユニットというシステムですが、実際持ち歩いて使ってみる非常にユースフルなものだと実感しました。
今後このGXRの展開として、熱心な写真愛好家が望むのはやはり、APS-Cサイズの単焦点レンズラインナップでしょう。28mmはもちろん、銀塩GR21を思い起こさせる21mm。また、広角スナップの定番35mmや、中望遠75mmや80mmあたりも出して欲しいところです。ただ、これは長きに渡ってフイルム時代からカメラに携わっているからこその意見かもしれません。そもそもレンズとセンサーをユニットで交換できるという時点で、パッケージングは次元を超えていきます。乱暴にフイルムカメラで喩えると、135フイルムから中判と、まったく違う次元の世界を一つのパッケージングに収めてしまうのですから、頭を柔らかくしないと、次何が出てくるか想像さえつきません。このあたりは長きに写真に接してきた私たちよりも、これからカメラを持って写真をはじめられる方のほうが柔軟に色々な可能性を思い起こすことができるのかもしれませんね。

 

 


さて、このGXR。リコーという会社だからこそ出てきたデジタルカメラだといえます。新たなフォーマットを引いたわけで、写真を愛する人達のカメラに対するコンセンサスからそう逸脱せずに、しかし、それに縛られず新たなフォーマットだからこそできることを考える。なかなか新たなユニットの設計思想の置き所に苦悩しそうな・・・。だからこそ開発は面白いと感じるでしょうし、そのファンな気持ちが市場に伝わり、また違った形でのデジタルフォトという楽しみを提供してくれるのではないかと願います。一番やっていただきたくないのは「ナンデモアダプタ」に成り下がることです。これは開発する皆さんが「写真(カメラ)好きな自分が好き」という状態や、「写真(カメラ)好き」といったものを定義することに終始することに陥らない限り大丈夫だと思います。

 

さて、今回リリースされたA12/S10についてですが、特にA12にいえることとして、繰り返しになりますが、センサーとレンズをユニット化することで全てを最適化させるという手法はデジタルフォトにとって王道とも呼べる手法です。まず、ひな形ができて、王道のユニットが次から次へと繰り出してくる土壌が整ったことに、1デジタルファンとして喜んでいます。ようやくデジタルらしいカメラがでてきたな、と。画は当然ズバ抜けてよいです。GXRを手にして、新たな撮影の可能性を手にしてください。

 

 

 

 

 

Copyright(C)2009 Yodobashi Camera / yodobashi.com All rights reserved.